年度中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるためには、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(業績悪化改定事由)」が必要です。
これについて、経営状況が相当程度悪化しているような場合でなければ該当しませんが、経営状況が著しく悪化したことなど、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることを言いますので、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれることになります。
一例ですが、次のような場合の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当することになります。
① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化について役員としての経営上の責任から、 役員給与の額を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
④ 現状では悪化しているとまでは言えないが、取引先の経営が悪化し今後売上の激減が避けられない状況にある場合
上記①については、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ役員の一部の者が株主である場合や、株主と役員が親族関係にあるような会社についても該当するケースがないわけではありませんが、そのような場合には役員給与の額を減額せざるを得ない、客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります。
また上記④については、現状では売上などの数値的指標が悪化しているとまでは言えなくても、取引先が手形の不渡りを出す等客観的な状況があり、今後の経営状況を踏まえると売上の激減が避けられず、著しく悪化することが不可避と認められた場合該当するものと考えられます。
なお、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じていたとしても、利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとは言えないことから業績悪化改定事由には該当しません。
編集 : 竹村